先週、科学界をにぎわせたニュースが発表されました。
アメリカにある国際研究チームが、『重力波』を世界で初めて観測した!というニュースです。
重力波については・・・ネットでググるとたくさーんニュースが出てくるので、詳しく知りたい方は調べてみてほしいのですが。
ざっくり説明すると、宇宙で何か大きな『物』が変化を起こす出来事(ブラックホールの衝突、恒星の爆発など・・・想像もできない)が起き、それがものすごいエネルギーを発生させます。それが時空の伸び縮みをおこし、その「時空の伸び縮み」は、波のように宇宙空間を伝わっていく。その波が「重力波」ということです。。。
(あー、物理詳しい方、つっこまないでください 汗)
この「時空にゆがみ・伸び縮みが起きるということ」「それが波となって宇宙空間に広がっていく、重力波という存在」については、かの有名なアインシュタイン博士が、100年前に「一般相対性理論」の中で提唱したものです。
ですが、実際の観測は今まで不可能でした。
それが、昨年の9月14日に、アメリカにあるLIGOという重力波の観測を行っている研究施設で、初めて重力波が観測されたということです。
その後、その観測が本当に重力波によるものか?その重力波の源は何なのか?が厳しく検証され、先週の発表に至りました。
重力波が観測できるようになると、今後、今までとはまったく異なった視点で宇宙を見ることができるようになるそうです。今回の成果は、ノーベル賞を取るのでは?とも言われています。
それほどすごいコト、らしいです!
えっと、物理学に全然詳しくない私が、どうして今回このテーマを書こうと思ったか、というと、今回の重力波の観測について、実は西オーストラリアの科学者チームが大きな役割を果たした、というニュースを読んだんです。
LIGOチームは、アメリカを中心に世界15か国の科学者が1000人規模で集まって作られているそうです。色んな国の科学者が様々に重要な役割を果たしてきてこその、今回の成果なんですね。
が、やはり今住んでいる地元で、そんなすごい研究に携わった人がいるなんて、驚きました。
そしてまた、その西オーストラリアの科学者の話をニュースで読み、昨年自分が訪れた場所とその時の体験をふっと思い出しました。
小さなことだったんですが、私の中でその思い出と今回の世界的ニュースがリンクして、勝手にワクワクしちゃったんです。
というわけで今回は、(おそらく日本のメディアではゼッタイに紹介されない 笑)西オーストラリアの科学者が重力波の観測に貢献した重大な事とは?西オーストラリアと重力波観測の知られざるつながりとは?を、紹介したいと思います。
ま、物理学は一番苦手な科目だった私が、説明できる範囲で、ってことですが・・・(笑)。
LIGO重力波観測を成功に導いた、影の人物が西オーストラリアに。
LIGOでは、2002年から重力波の観測が始まったようですが、8年間一度も重力波をとらえることはできず、2010年にプロジェクトは一旦終了したとのこと。
その後、観測装置の感度を向上させたAdvanced LIGOが開発され、それによって、ついに今回の重力波の観測成功に至った、ということらしいです。
この観測装置は、レーザーを発射し、それを途中で2方向に分岐させます。それを鏡で反射させ、反射した二方向のレーザーのわずかな差を感知することで、重力波の存在を検出しようというものだそうです。
レーザーの通り道は、筒で覆われています。
重力波はたいへん微小な空間の歪みで、物体は通り抜けてしまうが、レーザーでは検知できるらしいです。
が、それはものすごく小さな小さな歪みなので、レーザーを可能な限り長距離飛ばすことが、重力波をとらえるためには必要なのだそうです。
LIGOの観測装置は、地上で最大に可能な距離と言われる4キロ(!)の筒を使っているそう。さらに鏡を使って飛距離を稼ぐ工夫がされているらしいです。
ところが、Advanced LIGOのプロジェクトが直面するであろう問題点を、10年も前からつきとめていた科学者が、西オーストラリアにいたらしい。
それが、西オーストラリア大学(UWA)の教授であり、オーストラリア国際重力研究センター?(The Australian Gravitational Research Centre)のディレクターでもある、デイビッド・ブレア(David Blair)教授と、彼の率いる研究チーム。
デイビッド・ブレア教授は、1972年から重力波の研究をしてきた、この分野の先駆け的存在だそうです。
1990年代には、このブレア教授は政府や大学と連携しながら、オーストラリア国際重力研究センターが所有するオーストラリア国際重力観測所?(the Australian International Gravitational Observatory)に、80mのレーザー干渉計を建設したとのこと。
この観測所は、パースから約90km北にある、Ginginという小さな町にあるんですが。
しかも町からも離れた、西オーストラリアの見渡す限りのブッシュの中に、ぽつーんとある施設なんですね。
そこでこの教授は、長年、重力波の研究に情熱を注いできたということです。
この教授は、アメリカでAdvanced LIGOの開発が始まった時に、このままでは行き詰まるだろうと見抜いていたそうです。
アメリカで当時使われていたレーザーは、大変強力すぎたため、重力波の極微弱な振動を拡大しすぎてしまい、(ロックコンサートのスピーカーが音割れを起こすように?)装置全体が余計な反響をおこしてしまう。装置が不安定になり、感度が逆に損なわれてしまうだろう・・・。
ブレア教授と研究チームは、国際重力観測所の研究所で、アメリカのLIGOチームが作っている観測装置の縮小バージョンを作ってみることから始めました。
そして仮定通りの問題が起こることを確かめ、さらにその問題を改善し装置を安定化させることに成功しました。
アメリカのLIGOチームでも、この問題が実際に確かめられ、彼らの研究は装置の不安定性を改善するために役だったということです。
また、この研究チームは、独自の技術で鏡を繊細にチューニングすることを可能にし、Advanced LIGOの綿密なセットアップ作業にも携わりました。
こうした試行錯誤を経て、今回の重力波が検出できるほどの高感度の装置が実現したということです。
セットアップされたAdvanced LIGOは、実は本格運用前の試験的な稼働で、すでに重力波をとらえたとのこと。それが「あまりにも良すぎる」結果だったため、偽物の信号を検知したのではないか、と、当初科学者たちは疑ったほどだそう。
このことを報じているThe West Australianでは、
「(昨年9月に検知された)重力波は、もしもブレア教授率いる科学者チームがいなかったら、検知されずに地球を通り過ぎていたかもしれない。」
と書いていますが、これは言い過ぎではない・・・ですよね?
また、ABCニュースでも、「西オーストラリアの科学者達が重力波の観測に大きな役割を果たした」と報じています。
ちなみに、LIGOプロジェクトには、世界からおよそ1000人の科学者が参加しており、56人がオーストラリア人、そのうちの21人が西オーストラリア大学から来ているそうです。
広大なブッシュの中の科学博物館で聞いた話
この、ノーベル賞級の発見に大きく貢献した研究が行われたオーストラリア国際重力観測所は、パースから約90km北にある、Ginginという田舎町にあります。
この一帯に、重力波を観測・研究する設備が集まっているほか、Gravity Discovery Centreという科学博物館が併設されていて、私は昨年、家族でその博物館に行ったことがあります。
周りはまーるで何もない、西オーストラリアのブッシュが広がっています。
こんなところに科学博物館があるなんて、ちょっと、いやかなり意外でした。来る人、いるのかなぁ・・・と。
(学校の校外授業で利用されているようですが)
しかも、Gravity Discovery = 重力発見。
何のコト???と思いました。
なんとか敷地内にたどり着くと、科学館らしいちょっと変わった建築物が見えたりします。
展示自体は、わりと素朴な感じでした。
石が浮いている???(笑)
磁力が重力に逆らって物を浮遊させることができる、という説明。
やっぱりGravityというだけあって、物理学とか力学関係(?)の展示が多かったです。
もともと物理学に疎い私・・・さらに、英語の説明文なので、イマイチ理解できない~。
電子辞書を持っていったけれど、読むのに時間がかかるし、息子にすぐ手をひっぱられるし、落ち着いて見られませんでした。
ああー、もっと英語が読めて、説明文が理解できたら、もっと楽しめただろうなー、と思いました。
そう思いながら歩いていると、大きな鏡をみつけました。
そばにあったボタンを押してみると、鏡がグラングランと揺れ出しました。
なんだろう~?と思ってみていると、博物館のおじさんがやってきて、説明をしてくれました。
もちろん完全に理解もできなかったと思うし、うろ覚えな部分はありますが、、、
宇宙から、波がやってくるんですよ。
それはすごく小さい波で、物は通り抜けてしまうし、私たち人間には感知できない小さな波なんです。
でも、宇宙にはそういう波があることが知られている。
私達の今いる場所にも、やってきています。
もしその波が目に見えたら、こういう感じなんですよ、というのを示したのが、この鏡なんです。
へー!
この説明をされなかったら、この揺れる鏡が何なのか、全然わからなかった・・・。
(ただの揺れてる鏡じゃ・・・汗)
そして、この博物館のすぐ隣に、それを観測している建物がある、とか言っていました。
おじさんが、Where are you from?と聞くので、Japan. と答えたら、
日本にもそれを観測している施設があるよ、東京に。TAMAって知ってる?
といって、ある図を示してくれました。そこには、世界地図があって、ここGinginと、東京(TAMA)と、アメリカ、あとはヨーロッパ?などいくつかの施設が示されていました 。
その波を観測している施設は、世界でこれらの場所だけ。
南半球では、ここだけなんですよ~(自慢げ)
それぞれの施設で、データをやりとりしながら観測しているんです。
というようなことを言っていました。
そのおじさん、難しい話なのにすごくわかりやすく説明してくれて、話も聞きやすい。
それに意外に思ったのが、私のへたくそなジャパニングリッシュ(笑)でも、すんなり聞き取ってくれたんですね。
それにしても、思わぬところで日本とのつながりを発見して、ビックリしました。
TAMAって、三鷹にある国立天文台の重力波プロジェクト推進室のことでしょうかね?(後で知りました)
今思うと、たぶんおじさんが言っていたのが、重力波のことだったんですよね!!
(写真を見返してみたら、展示にGravity Waveって書いてあった。)
こんなヘンピなところにあるこの施設が、そんな世界的な研究をしている場所だったなんて、その時は夢にも思わなかった!
今回の西オーストラリア研究チームのニュースを読んで、本当に驚きました。
あと、私がすっごく気になっているのは、あのニュースの写真の教授、なんかどっかで見たことあるような・・・。
うーん、気のせいかな~?
『重力発見センター』でガリレオを体験
この科学博物館。難しいテーマだけあって、息子くらいの年齢の子が直感的に楽しむには、ちょっと地味だったかなーという気はしましたが、私は結構面白かったです。
この博物館の目玉は、The Leaning Tower of Gingin というタワーです。
高さ45mで、15°に傾斜して建てられています。
さっきのおじさんが、
受付で2つ水風船をもらえるから、片方は大きい水風船、もう片方は小さい水風船を作って、あのタワーに上って、上からいっぺんに落としてごらん。
と教えてくれました。
昔の人は、重い物は早く、軽い物は遅く、落ちると考えていた。でもガリレオは、どちらも同じ速度で落ちることを、ピサの斜塔から物を同時に落下させて人々に証明したんです。それと同じ実験をすることができますよ。
へー!
おじさんに言われた通り、水風船を受付でもらって、傾斜したタワーに向かいました。
タワーのそばの水道で、大小2種類の水風船を作りました。
タワーは傾斜していて、一番上の突き出た部分の真下に、広い砂場があります。
そこが、水風船を落とす場所。
階段を上っていきます・・・ちょっと疲れますが。
周りには、鉄の柵があるだけ。だんだん高くなっていくので、結構スリリング!
高くなっていくについて、風の強さもハンパない。息子は半分くらい登ったら怖がってしまい(高いところニガテ)、私と二人で地上に引き返すことにしました(笑)。
半分の高さでもこの眺め!
夫と娘は、最上部まで順調に上りました。上からの眺めは、こんな感じらしい(夫のカメラより)。
写っている建物は、敷地内の研究棟の一部のようです。見渡す限りのブッシュの中に、ポツンとこのセンターがある様子が見てとれますよね~。
水風船を落とすための穴から、「せーの」で落下!
そう、上の方は結構風が強いためか、やっぱり小さい水風船の方が、少しだけ後に落ちてきました。。。実験て、難しいですよね。
でも、面白い!
ガリレオのやった(と言われる)実験を、現代の私達が追体験してみる、という発想がおもしろい。
サイエンスって、ロマンですよねぇ~。
太陽系の大きさを知る面白い方法
ちなみにこの科学博物館には、もう一つ、屋外に面白い展示がありました。
Solar System Walk。太陽系散歩?
ブッシュの中にまっすぐな散策路があり、道の入り口に丸くレンガが敷き詰められています。
これが、「太陽」。
太陽系の距離を1kmに縮尺し、それぞれの惑星のモデルが、実際の太陽からの距離と同等の場所に配置されています。
惑星をたどりながら、片道1kmのブッシュウォークを楽しむことができるんですね。
ちなみに各惑星のモデルは、実際の縮尺を何倍かして大きくしているそうです。
(なぜなら、本当の縮尺だと、たとえば地球はコショウの粒くらいの小ささになってしまい、見ても面白くないから。)
左に見えるのが地球。右側の青いのは金星。奥にわずかに太陽のあった場所が見えます。
模型自体は全然凝ったものではありません。
木星や土星などの大きな惑星は、模型どころか石で丸作ってるだけ・・・ってのがツボでした(笑)。
これは天王星、だったかな?
でも、われわれの住む地球と比べ、太陽がいかに大きいか、というのが理解できること。
そして、太陽系の距離感を感覚で知ることができるのは、面白かったです。
水星、金星、地球、火星まではわりと太陽から近くて、それぞれの惑星も近いんですね。
でも、木星になると、グッと太陽から距離が離れます。
次の惑星を探すまでは、探検のような気分です。
一番端の冥王星(惑星ではなくなりましたが)まで来ると、もう太陽なんてどこか、かけらもわからない感じです。
冥王星はその衛星とともに、二重惑星とみなされることも。
ここまではとうてい、太陽のこの温かさなんて届かないだろうなぁ~、なんて思いました。
私達が一番近くに触れる宇宙、太陽系だけでも、端まで行くにはこんなに遠い。ましてや、宇宙なんて!
水金地火木土天海冥
って机の上で覚えるだけでは、この距離感はとうていわかりません。
そして、地球のあるポジションと言うのが、いかにレアなもので、私達生き物の命を維持するための唯一無二の環境を生み出しているか・・・ああーまさに奇跡だな、なんて思いました。人類なんて、ホントにちっぽけだ!!
太陽系の空間感覚を肌で感じるには、結構面白い展示だと思いました。
散歩としても楽しめますし。
先に出たデイビッド・ブレア教授は、さらなる重力波の世界的な観測を成功させるには、南半球にもLIGO級の重力波観測装置が必要だ、と考え、このGinginに建設するよう、政府や大学に財源確保を働きかけているそうです。
もしかしたら、このGravity Discovery Centreで、重力波が観測される日がくるかも!!!???