この2週間は、スクールホリデーでした。
その真っただ中、オーストラリアではイースターがあり、週末をはさんだ4連休がありました。
幸運にも天気に恵まれた連休だったので、私達家族は恒例のキャンプに行ってきました!
今回はその記録です。
シャークベイでストロマトライトを見る!
今回の旅行の目的地は・・・シャーク・ベイ(Shark Bay)。
なぜ、シャークベイに行くことになったかというと・・・
シャークベイは、パースから北へ、800km近く離れた場所にあります。
オーストラリア大陸の西端に位置し、緯度は西オーストラリアの南北の真ん中あたりです。
ところでシャークベイは、2つの細長い半島と、入り込んだ2つの湾を含む一帯から成り、特徴的な地形をしています。
200万ヘクタール以上と言われる広大なシャークベイ・エリア。1991年に世界遺産に登録されました。
その理由は、
「地理的な要因から、この地域でしか見られない特有の植物や動物が発展していること」
「絶滅危惧種とされる動植物が多く生息していること」
「海水の質や、陸地の風景など、自然の豊かさと美しさ」
などが挙げられますが、もう一つの大きな理由は・・・
ストロマトライト(stromatolites)。
後で詳しく書きますが、ストロマトライトとは、ごく簡単に言うと、『微生物の堆積物』のこと。
約30億年前に、光合成をおこなう微生物が地球に誕生したことで、空気中に酸素が増え、それが今現在の地球上の生命を 発展させるきっかけとなった、と言われています。
その太古の生命のシステムを、現在も保ったまま生き続けているのが、ストロマトライト。
現存するストロマトライト自体が、かなりレアなものですが、世界でその最も大規模なものが、このシャークベイにあるのです!
これも、シャークベイが世界遺産となった、大きな理由の一つだそうです。
実は、2年前のちょうど新年、私達家族はシャークベイにキャンプ旅行に行きました。
その時は、シャークベイにあるキャンプ場で2泊し、モンキーマイア(Monkey Mia)やデナム(Denham)という町を訪れました。
そう、その時、私達はストロマトライトを見ようと思っていたのですが、ある理由により見られなかったんです。。。
その時の旅の様子については、こちらの過去記事をお読みください。
あれから2年ちょっと。
最近サイエンスにすごく興味がある、我が家の息子。
「ストロマトライトが見たい!」と言うようになりました。
今回のキャンプの行き先を決める時も、息子は「シャークベイに行ってストロマトライトを見る!」と言い張って聞きません。
夫と地図を見ながら、「遠いよねぇ~・・・」と話していましたが、私達もストロマトライトは見逃しているし、息子の 熱意に押されて、目的地をシャークベイに設定したのでした。
しかし、一日でシャークベイまで行くのは、かなりキツイ。(まあ、前回は行きましたが・・・)
また、キャンプ場を移動しながら回る、ということも考えましたが、移動のたびにテントを建てて、翌朝たたんで、荷物を積み込んで、、、というのも時間のロス。
というわけで、シャークベイから約250km南にある、ノーザンプトン(Northampton)という町のキャラバンパークに2泊することにしました。
2泊3日の2日目に、テントをキャンプ場に立てたまま、シャークベイまで往復する、という計画。
1日目:自宅を出発、ノーザンプトン泊。
2日目:ノーザンプトン発、シャークベイへ往復し、ノーザンプトン泊。
3日目:ノーザンプトン発、帰宅。
ノーザンプトンという町は、ちょうど昨年のこの時期、スクールホリデーにキャンプしたところです。
その時の様子は・・・ 『何もない』町にあったもの・・・西オーストラリア中西部で過去をめぐる旅(1)
場所も様子もよくわかっているので、泊まる場所に関しては悩む必要がなく、楽でした。
キャンプ場で思わぬ出会い(笑)
キャンプの道具などは、すべて家にあるもので済んだので、新たに買い足した物は食材だけでした。
このへん、だいぶ西オーストラリアでのキャンプに慣れてきた感があります。
大きな忘れ物もなく、珍しく(?)予定通りに順調に目的地に向かった私達。
「今回は、車が故障しないといいなぁ~」なんて思いながら(笑)。
ただ一つ思惑が外れたのは、連休初日の金曜日は、Good Fridayで祝日。そのため、お店がみんな閉まっていたコト!
必要な食材はすべて前日に買っておいたので、特に困ったことはなかったのですが、、、
キャンプと言えば、長旅をして、テントを建てて、荷物をおろしたら、「おつかれさま!」のビール一杯くらい飲みたいですよね!?
ところが、ビール持ってくるのを忘れた・・・(がっくり)
リカーショップも軒並み閉店・・・(がっくり)
それがちょっとガッカリでした。
それでも予定通りにノーザンプトンのキャラバンパークに付いて、まずはホッと一息。
キャラバンパークの受付で支払いを済ませてきた夫が、「他にもジャパニーズのグループがいるらしいよ~」と教えてくれ ました。
「えー、珍しいね。こんな何もないところに???」
なんて話していました。
その後、また別の用事で受付に行った夫が、テントに戻って来るなり、
「知っている人に会った!!」
と驚いた顔で言って来ました。
なんと、受付の人が言っていた『ジャパニーズ』とは、夫の勤務先のクライアントさんだったのです!
やはりこの連休、カップルでキャンプ場にいらしたそうです。
す、すごーーーい!
こんなところで日本人と、しかも知っている人と会うなんてーーー!!(笑)
その後、お互いにビックリしながらご挨拶。
「奥さんのブログも読んでいますよ!」と言ってくださり、「ガス欠したんですよね?」
・・・わ、ホントに読んでる~ (はずかしー)※これについてはこの記事を
なーんて話をさせていただきました。
さらに、ビールまで頂いちゃって。。。(赤面)
ありがとうございました~♪
ノーザンプトンというマイナーな場所で、日本人に遭遇すること自体めずらしい事なんですが、まさか知り合いに・・・!
こんな、予期せぬ出来事が起きるなんて!!
やっぱり旅は面白いですね(笑)。
ストロマトライト・・・生命の生みの親に出会える場所
1日目はそんなふうに、和やかに過ぎて行きました。8時には就寝。
そして翌日。
予定通り、朝ごはんを食べてキャンプ場を出発し、シャークベイへ向かいました!
北へ向かう一本道をダーッと走っていきます。
・・・遠い(笑)。
そう、地図で見ると近いように見えるけど、ノーザンプトンからシャークベイまでだって、250km以上離れている!
朝9時に出発して、途中で給油などで立ち寄り、ストロマトライトの場所に到着したのはお昼頃でした・・・。
シャークベイの、東側の半島とオーストラリア大陸に挟まれた湾を、Hamelin Poolと言います。その最も南の奥まった場所が、ストロマトライトの群生地。
最近のパースは、だいぶ秋らしくなり、涼しい日も増えてきましたが、シャークベイはまだまだ夏の陽射し。
駐車場に車を停め、暑くてまぶしい海岸を、海の方に向かいます。
ストロマトライトの場所には、約200mの歩道が作られており、そこを歩きながらストロマトライトを観察することができます。
このたいへん貴重な「生きた化石」を守るため、歩道から外れてストロマトライトに触ったり、泳いだりすることは禁じられています。
スケールの大きな遠浅の海で、波はなく、静かで穏やか・・・。
エメラルド色の海面が、キラキラとまぶしく光っていました。
一見すると、ただの黒っぽい岩に見える。。。これがストロマトライト。
約30億年ほど前、シアノバクテリアと呼ばれる、微生物の一種が誕生しました。このバクテリアは、『光合成により、二酸化炭素から酸素を生産する』ようになった、歴史上で最初の生物だと言われています。20億年ほど前からは、シアノバクテリアの活動が活発になり、それに伴い大気中に酸素が存在するようになり、その濃度が増えて行きました。それがオゾン層を形成したことで、宇宙からの強烈な紫外線が遮られるようになり、生命が水中から陸上へと繁栄の舞台を広げることが可能となった、といいます。
その小さなバクテリアたちが集まって、層状になったものを、微生物マット(microbial mats)と言うそうです。ヌメヌメとした微生物マットの中では、さまざまな種類のバクテリアが住み着き、相互作用しあい、複雑な生態系を構築しているそうです。たとえば、シアノバクテリアは、光合成により二酸化炭素から酸素と炭素を作り出します。その周囲に別のバクテリアが集まっていて、酸素や炭素を使って別の物質を生み出します。それを利用する別のバクテリアが、また集まってきて・・・
・・・そんなふうにして、微生物マットができていくらしい。
また、微生物マットは、海水中の微粒子をとらえて岩石を作り出します。これがマイクロバイアライト(microbialite)と呼ばれるのですが、これが長い年月をかけて層状に積み重なったもの・・・これがストロマトライトだということです。
このような微生物マットは、30億年ほど前に誕生し、20億年前あたりには活発に繁殖したと言われます。世界各地で、このあたりの古い年代の地層から、ストロマトライトの化石が見つかっているそうです。
しかし、6億年ほど前から、ストロマトライト自体は、自然の淘汰の中で姿を消して行きました。
そんな中でも、地球上のごくわずかな場所で、今も「ストロマトライト」の形で生き続けているものがあります。
ここ、シャークベイのストロマトライトは、その中でも最大規模だということなんですね。
ほとんどの生物が、絶滅と進化を経験し、形を変えて今現在の姿で生きている一方で、30億年も前のシステムと同じ形で維持されている生態系が、ここにある・・・。
酸素がなければ生きていけない私達。ある意味、そんな私達生き物の、生みの親の姿を垣間見ることができるのです!
なぜ、シャークベイではこのような貴重なストロマトライトが生き残っているのでしょうか?
ハメリンプールの環境は、紫外線がとても強く、特に夏は45℃を越える猛暑になるそうです。また、特殊な海の地形から、海水の塩分濃度が通常の海水の2倍。
遠浅な海岸は、潮の満ち引きによって空気にさらされたり水面下に沈んだりを繰り返します。
このような過酷な環境で、ほとんどの動植物は生き延びることができないため、ストロマトライトにとっては天敵や競争者がほとんどいない場所なのだそうです。
確かに、陽射しが強烈だし、豊かに葉が茂った涼しい木陰もない。。。
オーストラリアの特徴的な、ごつごつした低木が、砂地にポツンポツンと生えています。
私達現代の人間なんてとうてい生きられないだろうけど、他の動物にとっても、生命を維持するには過酷な環境なんですね。
かなり写真を拡大していますが、ストロマトライトの陰に、魚たちが隠れているのが見えますか?
橋の上から撮影したものですが、浅瀬とはいえ、どれだけ水が澄んでいるか、わかると思います。
厳しい自然環境であるがゆえに、その中で生き延びられるモノにとっては、楽園のような場所なのかもしれません。
ストロマトライトのある海岸は、砂だけではなく、小さな無数の貝がらが積もっていました。
これも、この地の自然環境の特徴だそう。
・・・さて、ストロマトライトを堪能したところで。
「さあ車に乗るよ~」と言ったところで、肝心の息子がしょぼーんと不機嫌になっている。
あれ、君が一番楽しんだんじゃないの~???
もともと、BBCの『Earth The Power Of The Planet 』という科学系ドキュメンタリーを見て、ストロマトライトを見たいと言いだした息子。
Earth The Power Of The Planet 2 of 5 Atmosphere by kaanozten
↑このシーンのように、ストロマトライトと戯れたかったみたいです(汗)。
※このドキュメンタリーのプレゼンターDr Iain Stewart は、おそらく許可を取って特別に撮影したのでしょう。一般の人は泳いではいけません!
まあ、しかたがない。
貴重なストロマトライトですが、動くわけじゃないし、面白いことが起きるわけじゃない・・・。子どもがガッカリするのも、当たり前ではあるけどね~
というわけで、もう一つ「子どもが喜びそうなスポット」へ、行って見ることにしました!
(つづく)