西オーストラリアは2週間のスクールホリデー期間中です。
スクールホリデーは、西オーストラリアのQueen’s Birthdayを含む3連休(9/24-26)で始まりました。
春のロングウィークエンド。私達家族は、キャンプに行ってきました!
行く前も帰ってからもすごく忙しくて、しばらく記事をアップすることができませんでしたが、今回はそのキャンプについて、2回に分けて書きたいと思います。
隕石クレーターを見に、行ってみる?
そもそもキャンプに行こう、という話になったのは、こんなことから。
最近、宇宙や地球の起源に興味深々の息子。
「隕石クレーターの写真が見たい」というので、ネットで画像を検索して見ていました。
そしてふと、「オーストラリアに隕石クレーターってあるの?」と思って調べてみたら・・・
なんと、西オーストラリアにあるじゃないか!
しかも、『Dalgaranga 隕石クレーター』は、パースから約670kmのところにある!
しかも、一般人が行って見られるっぽい!!
隕石クレーターなんて、もちろん私は実物を見たことがありません。。。
ものすごく遥か遠くの存在だったけど・・・。
もしかして、行ってこの目で見られる?
と思ったら、一気に身近な存在に感じてしまいました。
息子に、「西オーストラリアにも隕石クレーターがあるんだってさ~。」
って言ったら、
「行きたい!!」(←いや、そう言うよね、そりゃ)
「でも、何時間も車に乗らなくちゃいけないよ?」
「いいよ!!行きたい!!」
・・・さっそく、道を調べてみます。
クレーターまで最も近い町が、Mount Magnet。(またはYalgooという町からもいけるが)
このあたりは、西オーストラリア中西部に位置し、ゴールデンアウトバックと呼ばれる地帯に入ります。
そのMount Magnetまで、パースから580km。車で約6時間半。
そこからクレーターまでが、約90kmですが、そのほとんどが、未舗装の道を行かなければなりません。
それが、どんな状態の道なのか、どれだけの速さで走れるのかも、まったくわからず。
つまり、時間が読めない。
Google Mapで検索しても、なーんにも出てこないような場所。
夫と二人で色々と調べて(と言っても、ネットではほとんど情報が出てこない)、とりあえず日帰りは無理だし、1泊でも厳しい、という結論になりました。
そのため、ロングウィークエンドを利用して、最寄の町で2泊しつつ、クレーターを見に行く、という計画を立てました。
夫は、未舗装の道を100km近くも走らなければならないし、そこまでして行って「がっかりスポット」だったらイヤだ・・・ということで、最初はかなり渋っていましたが、息子は何日経っても「行きたい」意志が変わらない。
実際に、西オーストラリアでは、自然の見どころがすごく豊富で、素晴らしい場所がたくさんあります。
ですが、実はものすごく貴重な場所だけど、大した看板も説明もないために、素通りしちゃったよ・・・みたいなスポットは多いんです。
私自身も、行って見た時はなんだかよくわからず、帰って来てからブログを書くために調べてみて、後で色々とわかることって多いのです。が、今回は頑張って (笑)行く前にガッツリ調べてみました。
Dalgaranga隕石クレーターって、何なのか???
Dalgaranga隕石クレーター
宇宙から地上に落ちてきた隕石が原因で作られたクレーターは、現在のところ世界中で176個が公式に確認されています。
そもそもクレーターとは、円形にくぼんだ地形を指し、火山の爆発などによってできたクレーターもあります。
クレーターが隕石によってできたものだと認められるには、実際に隕石のかけらが発見されるか、あるいはさまざまな科学的検証を行った結果、隕石が原因であると特定される必要があります。
隕石によるクレーターは、その多くが何万年、中には何億年も前に形成されているため、長い年月をかけて自然の作用で浸食されたり、中には地下に埋まったり、海底に沈んだり。。。と、クレーターの原型をとどめていないものも多くあります。そのため、「隕石によるクレーターだ」と特定されるまでには、時間がかかることも多々あるようです。
そんな中、オーストラリアには、隕石によるものだと認められたクレーターが、現在のところ32個(2015年)あるそうです。
加えて、隕石クレーターではないか、と考えられているものが、20個以上。
その中で、実際に隕石の破片が見つかっているクレーターは、Boxhole (NT), Dalgarana (WA), Henbury (NT), Veevers (WA), Wolfe creek (WA)の5個だそう。
Dalgarangaクレーター、実はすごい貴重!?
Dalgarangaクレーターは、直径24m、深さ3mの隕石クレーターで、現在認定されているオーストラリアのクレーターの中では最小のものらしいです。
1921年に、アボリジニの牧夫がクレーターを発見。彼から報告を受けた土地のマネージャーが、すぐ後に隕石の破片を発見したそうです。
その2年後に、みつかった隕石の破片は西オーストラリア博物館に持ち込まれ、学術文献として記載されたのは10年以上後の1938年のこと。
この場所は、25億年前より以前という太古の昔に形成された大陸地殻(Yilgarn Cratonという、西オーストラリアの中部から南部に広がる大きな地面の塊)の上にあり、その地面は主に花崗岩からできています。
ここで、隕石の破片がみつかったことにより、このクレーターは隕石によるものだと認定されました。
Dalgarangaクレーターに落ちた隕石は、石鉄隕石(stony-iron)です。
隕石には、
・石質隕石(stony meteorites)- 主にケイ酸塩鉱物から成る。
・鉄隕石(iron meteorites)- 主に鉄・ニッケル合金
・石鉄隕石(stony-iron meteorites)- 鉄・ニッケル合金とケイ酸塩鉱物がまだらに混ざっている。
の3種類に分けられます。それぞれ、隕石を構成する素材によって、見分けられます。
これらは、私の理解でおおまかに言えば、隕石の元となった天体が形作られる中でどんな過程(段階)にあったか、や、天体のどの部分が破片となって隕石となったか、などによって、違いがあるようです。
地球上に落ちてきた隕石のおよそ94%が、石質隕石。およそ5%が鉄隕石、そして、わずか1%が石鉄隕石。
Dalgarangaクレーターに落ちた隕石は、その石鉄隕石であり、さらにその中で、メソシデライト(mesosiderite)という種類に分類されるもの。
メソシデライト隕石が発見されること自体が非常に珍しい、ということがわかりますが、それによってできたクレーターというのは稀有なんです。
実は、Dalrarangaクレーターが、世界で唯一なのだそう・・・。
そしてDalgarangaクレーターは、この地域の気候の特徴から、たいへん良い状態で残っていると言われています。
その保存状態の良さから、約3000年前くらいにできた若いクレーターだとある文献では書かれていますが、最近の研究では、遅くて(最近で)2万5千年以上前のもの、という説から、あるいは、隕石によってえぐられ地表にさらされた石の年代推定から、27万年前のものでは、という説もあるそうです。
現在までに、小さな隕石のかけらが多数収集され、合わせて30キログラム弱が見つかっているそうです。
が、これ以上の詳しいことは、今のところわかっていない様子。
これは。。。すごい!
すごい・・・よね!?
Dalgaranga隕石クレーターに行って見た!
というわけで、キャンプを含む旅全体の記録は、次の記事で書くとして・・・。
ここでは、Dalgarangaクレーターを訪れた様子を書きたいと思います。
ミステリアスかつ正真正銘ホンモノの隕石による、小さなクレーター。
実際にどんなものだったか・・・。
初日は、パースの自宅からおよそ7時間かけて、Mount Magnetまで行きました。
キャラバンパークでテント泊。
二日目の朝、Dalgaranga隕石クレーター目指して、出発!
Mount Magnetは、金の採掘で発展した町であり、現在も金のマイニングは行われています。
町を出ると、荒涼とした大地にマイニング場が現れ、それを通り過ぎると、、、なーんにもない大地。
すぐに舗装道も終わり、砂だらけの道がひたすら続きます。
この日は、西オーストラリア中西部は天気がよい日が続いていたため、ひどいぬかるみなどはなく、予想(覚悟?)していたほど走りづらい道ではありませんでした。
時速70-80kmくらいで走れたと思います。
とはいえ、視界には、ひたすら続く、青い空とブッシュランド。
赤茶けた土の道が、どこまでもまっすぐに続いて・・・本当に私達はどこにたどり着くんだろう?この道で合っているんだろうか?(といっても、他に行く道なんてない)と不安になってしまいます。
だって、カーナビにも、道も何も表示されないのだから(笑)。
私達の携帯(Optus)は、前日からNo Service。この孤立感、ハンパない。
ここで立ち往生したら、どうしよう・・・
けれど、そんな何もない荒れ果てた場所も、この季節はワイルドフラワーに彩られていました!
1時間ほど・・・ひたすらこんな景色だけを見ながら、進んでいきました。
それでも、3回ほど、対向車とすれ違ったかな?
こういう場所では、すれ違うだけでも、運転手同士、挨拶し合う習慣のようです。その気持ちもわかる気がします(笑)。
とにかく進んでいくと・・・通り過ぎたところで、看板発見!
あまりにも目立たない感じで立っていたので、通り過ぎてから気が付いて、引き返しました。
同じようにUターンしてる轍がいっぱい(笑)。家族で思わず笑いました。
さらに進んでいくと・・・道がない。
「え、行き止まり!?迷っちゃった???」
と不安になったところで、ふと木々の中を見回すと、、、
これだ!!
あったー(笑)。
写真ではうまく伝わらないかもしれませんが、実際にそばで見ると、結構迫力ある窪みでした。
オーストラリアで最小のミニクレーター~・・・なんて思っていましたが、実際には、これだけの穴が隕石の衝突によってあいたのかと思うと、驚くものがありました。
意外にも深く、そしてきれいにえぐられていました。
しかし・・・調べた通り、学術的にはかなり貴重なクレーターだと思うのに、なんとも無防備な管理。
柵も、注意を促す看板も、なーんにもない。
※ちなみに、トイレも水飲み場もありません。
クレーターの中には低木が元気に生え、季節がらワイルドフラワーも咲き乱れ、あたりにはカンガルーの(たぶん)まだフレッシュなフンが・・・。
完全にここの自然環境と一体化していて、「隕石」という言葉の異次元な響き、その威厳みたいなものが、ない(笑)。
クレーターの中も、カンガルーはもちろん、人も歩き放題。
「いいんかな~?」と思いつつ、隕石クレーターをこーんな間近に自由に鑑賞できるなんて、すばらしい経験に違いない!と思いました(笑)。
驚いたことに、私達が到着してしばらくしたら、次から次へと訪問者がやって来るではありませんか?
結構子ども連れも多く、やはりスクールホリデーを利用して来たのだろう、と思いました。
意外にも、人気スポット?????
クレーターの底部から外を見上げると、結構急な斜面です。
隕石を発見してみる???
ここに来たら一つ、シャレ半分でやってみようと思っていたことがありました。
それは・・・隕石さがし!
このDalgarangaクレーターは、メソシデライト隕石によってできたクレーターであり、周囲では隕石の破片が多数見つかっているとのこと。
目につくような大きいものは、もちろん科学者の人達がすでに採取し尽くしたと思います。
けど、もしかしたら、小さな小さなかけらは、まだあるかも・・・?
メソシデライト隕石は、磁石にくっつくという特徴を持っているとわかったので、私達は小さな磁石を持っていきました。
クレーターの近くで、磁石につく石ころがないかなぁ~。
ちょっとだけ地表の砂を手でどけて、磁石を軽くこすりつけてみたら、明らかに磁石に吸い付くものがありました!
とはいっても、数はかなり少ない。そして、ちっちゃなものばかりです。
私の手のひら。これだけ探すのにも、何十分かかかりました。
もしかして・・・隕石!?
隕石は、鉄が酸化して、外観は錆びたようになっていくそうです。
でも、地上の鉄鉱石かもしれない・・・?
実際にこれが隕石かどうかを調べるには、たぶん中を割ってみないとわかりません。
割ってみて、鉄・ニッケル合金のメタリックな材質と、ケイ酸塩鉱物の白っぽい(?)ものがまだらになっているのが見えたら、隕石の可能性あり?
うーん、私は西オーストラリアの地質学もぜんぜんわからないし、なんとも・・・です(ため息)。
でも、面白いですよね~。
もしもこれが本当に隕石のかけらだったら・・・?と考えただけで、思わずワクワクしちゃいます。
肝心の息子は、もっと大きな隕石をみつけられる!とイメージを膨らませていたらしく、
Disappointing. (がっかりだ)
とむくれていましたが(苦笑)。
それでも、数千年から数万年前に、隕石が落ちて形作られたクレーターが、今でもこんなふうにほぼそのままの形で残っているなんて、すごいことですよね。
この場所へたどり着くまでに、ブッシュランドをひた走ってきたけれど、それほど自然に包まれた辺鄙な場所だからこそ、丸ごとのクレーターが保たれてきたのかも、と思いました。
宇宙の神秘に一歩近づく旅。
・・・と思っていたけれど、宇宙どころか、自分が住むこの地球の壮大さに、圧倒された旅でした。
『地球の歴史』なんて考えたら、あまりにスケールが大きすぎてピンとこないけど、それでも今の私達が知るこの世界の、はるか以前から自然はこうして世界を形作ってきたのだ、ということを、ちょっとだけ肌で感じたような気がしました。
私達が今、この世界を生き、さまざまな恵みを享受していることは、本当に奇跡的なことなんだな・・・と思いました。
Dalgaranga隕石クレーターを含め、今回の旅は西オーストラリア中西部・ゴールデンアウトバックの自然に圧倒されっぱなしでした。
その旅の全容は、次回に書きたいと思います!