4月になりました。秋ですね~♪
今週はグッと涼しくなって、快適な気温のパースです。
最近は週末ごとに、ガーデニングにいそしんでいる我が家です。近々、様子をブログにアップしようと思います!
ところで、ほとんどどの家庭でも、卵は購入しますよね?
我が家でも、朝食に目玉焼きを焼いたり、家族のお弁当に、炒め物に、スープに、お菓子作りに。。。と、出番が多い食材です。
パースではさまざまな銘柄のたまごが売られていますが、それぞれ
・Cage Egg(ケージエッグ)
・Free Range Egg(フリーレンジエッグ)
・Barn-laid Egg(バーンレイドエッグ)
などと書かれています。
パースに来た当初は「何だろう?いったいどれを選べばいいのか?」と悩んだものでした。
まず値段から言うと、安いのはケージエッグ。1パック12個入りで、たまごの大きさにもよりますが、だいたい$2~$4くらいで売っています。
それに対し、フリーレンジエッグは、1パック$4~$8。
(価格はお店やメーカーによってかなり変動があります)
家計のため節約したい身としては、ケージエッグを選びたい。
でも、食の安全性や価値を考えると、フリーレンジエッグを選ぶべきなのかしら・・・?
なぁーんて、今でも悩んじゃいますね~。
今回は、オーストラリアのたまごのトレンドについて、です。
消費者として、どのたまごを選んだらよいか?の参考になればと思います。
また、オーストラリアの卵事情を知ることで、身近な食材『卵』の見え方が、少し変わってくるかもしれません・・・。
フリーレンジ vs ケージ
まず、ケージエッグとフリーレンジエッグ、どう違うかというと。。。
ケージエッグの場合は、卵を産むめんどりは、かご(バタリーケージなどと言われます)の中で飼われています。
感染病の予防や衛生管理がしやすいこと、また生産性を増すために、多くの鶏卵生産者がこのようなケージによる飼育方法を採用してきました。
ケージエッグが比較的安価で売られているのは、このためです。
しかし、近年、アニマルウェルフェアという考え方がヨーロッパを中心に世界的に広まっています。
特に畜産動物に関して言えば、動物達が苦痛や恐怖を与えられたり、本来の動物としての行動・行為を制限されることがあってはならない、というふうに考えられています。家畜といえども、動物本来の姿で生きることが尊重されなければならない、という考え方です。
このようなアニマルウェルフェアの考え方から、最近ではバタリーケージを使用した養鶏を止めよう、という動きが西欧圏では出てきています。
バタリーケージでは、鶏1羽に対し与えられたスペースは、たったの約20㎝四方。鶏たちは自由に動き回ることも羽を伸ばすことすらできません。窓もないような建物の中に、ケージが何重にも積み重ねられ、鳥たちがギュウギュウに押し込められている場合も。狭い中で鶏たちがつつき合うことを防ぐため、くちばしが人工的に切り取られるそうです。
そのような環境で、鶏達はただひたすら卵を産み続けます。
密集していることや、運動不足やストレス等から、病気になりやすいため、抗生物質を与えられることが多いそうです。
アニマルウェルフェアの観点だけでなく、食品としての安全性を疑問視する声も小耳に挟みます。
スイス、スウェーデン、ドイツ、ベルギー等のヨーロッパ諸国では、すでにこのようなバタリーケージを禁止している国もあるそうです。
一方、鶏をケージに入れず、自由に歩き回れる環境で飼育する方法があります。
これが、フリーレンジと言われます。
十分な広さの敷地内で、鳥たちが好きな場所で過ごし、羽を広げたり、卵を産んだり、休んだり・・・することができるようになっています。ストレスが少ない環境で、にわとりは健康的に過ごすことができます。
オーストラリアで「フリーレンジ」といえば、一般的には、屋外と鶏小屋を鶏が自由に行き来できるようになっている飼育方法を指すようです。
他に、十分な広さの屋内で、鶏が自由に歩き回れる状態で飼育された鶏の卵を「バーンレイド エッグ」というようです。
オーストラリアでも、RSPCAなどの動物保護団体が、バタリーケージを廃止しフリーレンジを推進するよう政府に働きかけています。
ただし、フリーレンジの飼育方法では、飼育に広い敷地が必要となるし、鶏が産み落としたたまごを人手で集めないとならない、など、管理に労力がかかることは否めません。
ケージエッグに比べると、フリーレンジエッグが高価なのは、うなずけます。
オーストラリアの消費者はフリーレンジ派?ケージ派?
オーストラリアの消費者からは、実際にフリーレンジエッグはどのくらい受け入れられているんでしょうか?
消費者のための非営利調査団体CHOICEが2014年に行った、オーストラリア国内1969人を対象にした調査によると、65%の消費者が過去1年以内にフリーレンジエッグを購入したそうです。
その理由として、アニマルウェルフェアを挙げたのが68%、フリーレンジエッグ生産者をサポートしたいから、が52%、味がよいから、が44%でした。
また、67%が、きちんとした規制の元に適切な羽数で飼育されたフリーレンジエッグには、もっとお金を払ってもよい、と考えていることがわかりました。
およそ半数以上の消費者が、たとえ価格が高めになっても、ケージエッグよりもフリーレンジエッグを選びたい、と考えているんですね。
そしてその理由として、オイシイから、といった嗜好の観点よりは、アニマルウェルフェアといった倫理観みたいなものの方が、より大きな原動力となっていることが、興味深いです。
こうした消費者の選択と、動物保護団体等のプレッシャーもあると思いますが、一部の大企業もケージエッグ離れに動いているようです。
ファストフードの大御所、マクドナルド オーストラリアは、2015年より一部ケージフリー(Cage-Free)エッグの使用を開始し、2017年までには完全にケージフリーエッグのみに切り替える、と発表しています。
それまでは、100%ケージエッグを使用していました。
また、サンドイッチ系ファストフードの大手、サブウェイ オーストラリアも、2015年よりケージフリーエッグのみを使用するようになりました。
(ケージフリーは、フリーレンジまたはバーンレイドを含むだろうと推測します。)
オーストラリアの大手スーパーColesは、自社ブランドの卵についてはケージエッグを廃止し、全てフリーレンジエッグにしました。
もう一方のオーストラリア大手スーパーWoolworthは、すべてのケージエッグの販売を2018年までに止める、と発表しています。
オーストラリアで同じくポピュラーなスーパーIGAでは、今のところ40店舗でケージエッグの販売を停止しているとのこと。
Australia Egg Corporationによると、国内で販売されている53%の卵がケージエッグ、38%がフリーレンジ、8%がバーンレイド、とのこと(2015年)。
ケージフリーのたまごの販売は、年々増えているそうです。
オーストラリアでは、ケージエッグをやめよう、という動きが大きくなっているようですね。
↑Colesブランドのフリーレンジエッグ。4ドル台で売られています。
「フリーレンジエッグ」の真実
そんなわけで、「フリーレンジエッグ」というと、健康的でナチュラルな飼育方法のため、割高だけどすんごく高品質の卵だ!と思うかもしれません。
ここで、オーストラリアでいう「フリーレンジエッグ」とは厳密に言うと何なのか?
ちょっと整理してみます。
実は今現在、『Free Range Egg』に対するオーストラリア政府が定めた法律というのは、ないらしいんです(※導入予定という話はある)。
動物保護団体や、鶏卵産業の協同組合、フリーレンジエッグに関する団体などが、フリーレンジで飼育する場合のガイドラインを設けていますが、たとえば飼育羽数にしても、1ヘクタールあたり185羽から10,000羽までと、幅が広過ぎて、何を信じたらよいのやら、、、という感じです。
一応、オーストラリア国内で定められた家禽飼育のガイドライン(Model Code of Practice for the Welfare of Animals: Domestic Poultry)というのがあるようです。それによると、「フリーレンジエッグ」に適した鶏の羽数は、屋外で1ヘクタール(10000平方メートル)あたり1500羽以下、と定められています。
しかしながら、「適切な対策をすれば、これより多く飼育することもできる」など、含みを持たせたものになっています。
そして、これらのガイドラインは全て、生産者が自主的に目安とするためのものであり、強制力はないんですね。
ちなみに、動物保護団体RSPCA Australiaでは、1500~2500羽/ヘクタールを推奨しているので、政府のガイドラインとほぼ一致しているといえます。
消費者のための調査団体CHOICEは、オーストラリア国内の全フリーレンジエッグの銘柄について、価格と、1ヘクタール当たりの飼育羽数を調査し、一覧を発表しています。
Free-range eggs buying guide - CHOICE
これを見ると、約60%弱が、前述のガイドラインで示された1500羽/ヘクタール以下ですが、30%はそれ以上の密度で飼育しています。12%は飼育密度が不明。
フリーレンジエッグの導入で注目を集めたColesやWoolworthですが、プライベートブランドのフリーレンジエッグについては、両者とも1万羽/ヘクタールということで、一部ネット上では「フリーレンジとはいえない、ぼったくりだ!」と叩かれていましたが(笑)。
1ヘクタールあたり1万羽の鶏がいるって、どんな感じなのかな?キツキツなのか、結構余裕があるのか、私には想像もできませんが・・・。
スペース(飼育の密度)の他にも、鶏本来の習性を尊重するために、「砂浴び」をする場所があるか、「止まり木」があるか(鶏も夜は高いところで休むようです)、安心して卵を産める場所があるか、なども、フリーレンジで飼育するためには大切な要素だそうです。
↑Margaret River Free range eggs。鶏の密度は2500羽/ヘクタール、エサとなる穀物には抗生物質・ホルモン剤は使われていないそうです。12個入りで$8台。
私達消費者は、フリーレンジエッグというと、のびのびした環境で、めんどり達がストレスなく自由に過ごせる、と想像するし、そうやって生産された卵を食べたいから、敢えてフリーレンジを選ぶんですよね?
ですが、実際の「Free Range Egg」は、そういうものも確かにある一方で、「鶏をケージに入れていないだけ」というものもあるのは事実だと言えます。
2014年に私が見たニュースでは、西オーストラリアのSwan Valley Eggsが、自農場のたまごに「フリーレンジ」という言葉を不当に使用した、ということで、オーストラリアの消費者委員会?(Australian Competition and Consumer Commission:ACCC)により摘発されました。
Dead chickens, dumped eggs in ‘free-range’ Swan Valley Farm horror - WAtoday.com.au
ACCCは、この農場の鶏達が、国のガイドラインである1500羽/ヘクタールを大幅に上回る密度(165000羽)でギュウギュウに飼育されていることから、「フリーレンジ」の表示は不適切である、として訴えました。
このような過密な状況では、フリーレンジの要件である、適切な環境の屋外を自由に移動できるという条件を損なっているにも関わらず、この農場はたまごを「フリーレンジエッグ」として、バーンレイドエッグよりも高く販売していた、ということです。
また、地元メディア、西オーストラリア政府機関、農場がある行政区のWanneroo市が立入調査に入ったところ、農場内には鶏の死骸があちこちに放置され、フンや割れた卵が山積みになっていたそうです。
生き残っている鳥たちも、多くが健康状態が悪かったとのこと。
衛生面の管理も含めて、問題となったようです。
フリーレンジエッグ、といっても、こういう悪質なものもあるんですね・・・。
ちなみに、現在この農場の卵は、スーパーで普通に売られていますが(汗)。
その後、どうなったんでしょうか。。。
パースで卵買うなら?
長々と見てきましたが、フリーレンジエッグは「鶏が自由や習性を奪われずに過ごせる」ということが目的です。
そのため、たとえばエサの内容とか、抗生物質やホルモン剤を与えるかどうか、などは、規定がないのかな、と思いました。
ただ一般的に、自然環境の中でストレスが少なく健康的に過ごしているめんどりならば、不自然なホルモン剤や抗生物質などの薬品を使う必要性も減るのかな・・・なんて思います。
私がスーパーマーケットで見た限りでは、たとえフリーレンジであっても、「抗生物質・ホルモン剤不使用」と表示のあるものはごくわずかでした。
かといって、書いていないから使用している、ってわけでもないんですよね。
これまで書いてきたように、「フリーレンジ」といっても、品質は様々と言えます。
パースで信頼できる卵を購入する一つの手段としては、週末にあちこちで開催されているファーマーズマーケットがあります。
どこのマーケットでも、たいていパース近郊のフリーレンジエッグが売っていて、生産者が直接売りにきているので、「いつ採れた卵?」「どんなエサあげてるの?」など質問することができます。納得して買うことができるでしょう。
また、オーガニックのフリーレンジエッグなら、放飼いであるだけでなく、にわとりのエサに人工の農薬や遺伝子組み換え作物なども使われていません。こうした点にこだわりたい場合は、オーガニック認証(Certicied Organic)の表示があるものを選ぶとよいです。
ただやっぱり、フリーレンジ、オーガニック・・・となっていくと、値段は割高になりますが。
ちなみに日本では、たまご農場の90%以上がケージ飼育だそうです(ウィキペディアより)。
私も以前日本にいた頃は、特売の99円のたまごを買いにディスカウントスーパーに行ったりしましたが・・・このような事実を知ると、考えさせられます。
日本でも、通販などで販売されている、自然な環境で平飼い・放飼いされた、健康的なこだわりのたまごはやはり高価で、こちらでフリーレンジやオーガニックを買うのと値段感覚は変わらないように思います。
「たまごは安くて便利な食材」という価値観そのものが、本当は間違っていたのかも、、、なんて、今回の記事を書いていて思いました。
とはいっても、食費がなぁ・・・。
いまだにたまごを買う時は、あれこれ悩んでしまう私です。
何と言っても究極は、自分でにわとりを飼うこと!
パースでは、自宅の裏庭でにわとりと飼うこともそれほど珍しくないようなので、私もいつかは挑戦してみたいな~。